まさか、メインストーリー編の途中で逮捕されるとは…思ってもみませんでした。同胞団プレイをしていると、「犯罪行為」を自ずと避けるようになるので、
「実際に捕まったらどうなるのか?」という問題について、これまで深く考えたことはありませんでした。
折角なのでこの機会を利用し、スカイリムの
『犯罪の仕組み』や
『NPCと犯罪の関係』も調査してみたいと思います。―――と、気楽に調べ始めたものの…どの世界においても「法律」は想像を遥かに超えるほど、複雑に入り組んだシステムになっていたのでした…。
道化エルフ「ああ…私にはさっぱり理解できないヨ…。このまま泣き寝入りするしかないのダロウか……」
【導き手の転落】 vol.1~収監~
アシス「面会に来たぞ~、同志。」 道化エルフ「(はっ?)アシスッ!!」
※フォロワーは刑期を終えるまで、ドール城の入口に待機しているはずですが…Modで既存のFollowerQuestと別枠で雇用した影響からなのか、牢の近くまで会いに来てくれました! 彼らは抜け道の“モルタルの壁”の向こう側からやって来ました。(…案外、健気な奴らだ……涙)
アシス「お前がコドラクの遺言で“導き手”になったという話は…まだ、同胞団内部の者しか知らない。世間では、ソリチュードの街中で処刑を見た“一人の道化師”が発狂し、騒ぎを起こした事件と認識されている。…ホワイトランじゃなくて良かったな。」
ハドリア「そして私たち(フォロワー)の罪は無かったことに。“雇用者であるあなた(プレイヤー)が全ての連帯責任を負う”ようね…。残念ながら―――それがスカイリムの法らしいわ。」
スレンドラ「だが…俺たちが“雇われてない時”にしたことであれば、今回のように個人的に行った犯罪の責任をあんたが取らされることは無かったんだ。
※『一部の例外』を除いての話だけどな。…あんたは運が悪かったようだ。」
道化エルフ「かはぁ゛っ…!!!(精神的ダメージ)」
※「傷害罪」の場合は上記のパターンが適用されるようです。しかし、
「スリ/収集AIPackage」を使って盗ませた場合、面識のない
第三者NPCがした犯罪であっても、何故か
無関係のプレイヤーが責任を問われるという、謎の仕様があるようです。(
UNI様からコメントで教えていただきました)
道化エルフ「ケ、ケケッ…では、丁度良イ。まさかココまで会いに来てくれるとは思わなかったヨ。…私は囚われの身ダ。釈放まではそれぞれ自由に行動すると良イ…!それこそ、
“各自の責任”でネ。」
アシス隊(フォロワー)は道化エルフ(プレイヤー)に、
雇用を一時解除された。
(~回想~)ムショにおける過ごし方。読書&食事。
道化エルフ「拘留中に自分の罪状について調べたヨ。(ガクッ…)どうやら私は…何もせずに7日間、この薄暗い牢の中で、“おつとめ”をするのが一番良いらしいンダ……」
スレンドラ「7日…?あれだけの罪を重ねて、刑期がたったの7日間なのか?!……犯罪が無くならない訳だな…(汗)」
アシス「じゃあ、それまで我々は…大都市・ソリチュードの観光と酒場めぐりで、久々の休暇を満喫するとしよう!―――用心しろよ、同志。」
アシス隊一同「!!?」
(クルッ…!…スサササッ…ガシャコン!ガシャ!…ガシャアン…!!)
道化エルフ
「Here's johnny~!!!」
アシス隊一同「(ヒェッ…!!?コイツ、どっから斧を…)」
道化エルフ「…ああ、せいぜい楽しんでくれたマエ。ソリチュードの牢は思ったより快適でネ…!! 自分の城にしてしまっても良いくらいだヨ。」
アシス「…何を寝ぼけたことを言っている。牢に入れられた囚人に、“脱獄”以外に何ができるっていうんだ?…変な気を起こすなよ。」
道化エルフ「私は…今から“この監獄内を完全に支配スル”ことになるだろう…イヒッ!」
アシス隊「はぁ?」
【CrimeFactionとは?】
まず最初に、犯罪行為全般の取り締まりを設定している
『CrimeFaction』について調べました。最も頭を悩ませたのは…「逮捕の定義」がとても把握しづらい点でした。
CrimeFactionはActorに対して、“たった一つだけ”設定できる特別なFactionのようです。
「AssignedCrimeFaction」の所に指定されています。ここが「NONE」になっていると、犯罪行為に個人的に対応することしかできなくなります。(報告・救援・犯罪の記憶・共有が不可)
「逮捕」されるかどうかは、犯罪者の周囲にいる者が所有するFactionの設定で決まっているようです。CrimeFactionに
「Arrest」が設定されていれば、逮捕を行えます。逮捕は基本「衛兵」が行いますが、「被害者本人」が「Arrest」に☑されたFactionを持つ場合は、直接「犯人」の罪を咎めて責任を取らせる行動に移れます。こういったタイプのFactionは主に、各ホールドの「住民」と「衛兵」がもれなく所有しているようです。
※以降、「Arrest」が許可されたFactionのことを
『逮捕Faction』と表記。
しかし「住民」と「衛兵」の「逮捕」には、
『捕らえた犯人に話しかけ、処罰を決められるかどうか』という
決定的な違いがあるようです。この点に関しては少し複雑なので、CrimeFactionの理解を深めた上で、もう一度振り返ることにします。
被害者は、敵対した後に
「Aggression」と
「Confidence」に応じた反応を見せます。この値が高いと、犯人(プレイヤー)に対して自ら攻撃を仕掛けてきます。値が低いと敵対しても、「誰か何とかしてくれ!」と危険を感じてその場から逃げ出します。―――さらに、被害者は目撃者にもなり得ます。
目撃者は、視線判定(隠密の目のマーク)によって犯人を
検出した場合、“各要塞の衛兵”に
「通報」し、現場に呼び寄せます(最大で
4人)。衛兵は犯人が武器をしまい、降伏の意思表示をすると「お前はスカイリムとその民に対して、罪を犯した。何か釈明はあるか?」という対話が発生します。この状態こそが「逮捕」です。対話の選択肢によって、見逃してもらえたり、逮捕されたり、罰金を支払ったりと、プレイヤーは罪に対する何らかの埋合せを求められます。
衛兵が駆けつけると、「PursueIdleTopic」の対話が発生し、周囲の敵意が一時的に解除されます。『逮捕Faction』は、問答無用の攻撃で互いに殺し合いになる前に、話し合いで一度だけ反省する機会を与えてくれるための“ワンクッション”的な役割を果たしているのです。
【CrimeFactionの分析】
上記の説明だけでは分かりにくいので、具体例を挙げて、設定されたFactionごとの「犯罪に対するNPCのリアクション」を分析してみます。犯罪は主に内部処理的に扱われているので、視覚的な確認が取りにくいです。「今、どのような処理が起こっているのか?」を想像すること自体が、非常に難しいと感じます。
<衛兵・住民のCrimeFaction>
「Ignore Crimes against non-members」は、犯罪の目撃者になった場合に、被害者のFactionに各種犯罪行為を
報告しないかどうか。例えば、StealingとPickpocketに☑がついていると、窃盗やスリの目撃者になっても、見て見ぬふりをします。全て空欄なので、犯罪の種類を限定せずあらゆる行為に対して、被害者のFactionの仲間達に報告します。報告する意味ですが、第三者の立場としては「犯行現場にいない被害者派閥の仲間に犯人を覚えてもらう目的」。身内(同一Faction)の立場としては「メンバーAが、犯罪を目撃したが犯人に現場から逃げ切られてしまった⇒現場には居なかったメンバーBが、別の場所で犯人に遭遇したら、敵対したり捕まえたりする行動を起こせるようにするため」だと考えられます。
「Do not report crimes against members」は、自分の所属するFactionに
援護を求めないかどうか。空欄なので、犯罪が起こると自分が所属するFactionのメンバー(衛兵)or勇敢な人(傭兵)を呼び寄せます。犯罪の目撃者・被害者になった瞬間に、続々と派閥の仲間たちがやってきます。衛兵の場合は容姿が同じなので、誰がどこから選ばれてやってくるのかが、はっきり把握できませんでしたが…同胞団で考えてみると、コドラクの部屋で重罪(殺人)を犯した場合、エオルンドやティルマを除くメンバーが隣のCellからほぼ全員で殺しに来たので、おそらく、
LocationのRadius2000~4000くらいに居る人が助けに来ると推測されます。呼び出される人数は、最大で4人までと思われます。
「TrackCrime」は犯罪情報の
記憶。☑がつけてあると、衛兵の「待て、お前を知っているぞ!」の台詞が示しているように、犯人が過去に自分たちのFactionに対して罪を犯している場合、「逃亡中かどうか」や「どれくらいの賞金額なのか」などを記憶するようです。生成されたActorや一部のQuestで登場する人に限った稀なケースですが、Actorが所有する複数のFactionのいずれにも☑がついていない人がいます。その場合は「以前にされたことを記憶しない⇒罪が行われた瞬間の犯罪のみを判定する」、となります。この種のFactionを持つActorは連続して軽犯罪を行われても「なんでそんなことをする?」と繰り返し言うだけで、一瞬一瞬の罪に対する反応しかできません。懸賞金が一気にハネ上がるような深刻な問題に巻き込まれない限りは、ずっとやられっぱなしになるいうことです。
「SharedCrimeFactionList」は、CrimeFactionListに入っているFaction間の情報共有。「Ignore~」と「Do not~」は、被害者派閥や自分たちの派閥への犯罪情報の共有と言えますが、こちらは第三の派閥と共有するための設定です。例えば、ドーンガード領内からデュラック氏が旅をして、ホワイトラン領内までプレイヤーをスカウトしに来ていたとします。そして、デュラック氏が旅先のホワイトラン領内で何らかの犯罪に巻き込まれ、被害者となった場合、ドーンガードの衛兵は距離が遠すぎて駆けつけることができません。こういった事態に対し、ホワイトラン衛兵たちは、自分の所有するFactionが直接現場を目撃したり被害に遭ったわけではなくても、“Listに加入している派閥からの訪問者”を自分の派閥の住民と対等に扱います。大抵、どの領地内でも助けを求められれば、衛兵が犯人を素早く捕らえようとしてくる現象は、「Faction間で共有」しているCrimeFactionListの「同盟」に即した行動であると考えられます。一方で、Listに加入していないFactionに所属している者は、領地にとって“招かれざる客”であると認識され、その人物がどんなにひどい目に遭わされても…衛兵たちは傍観者になります。
「AttackonSight」は、賞金額が高い人が視界に入った場合に問答無用で
攻撃を仕掛けるかどうか。傭兵や盗賊ギルド、賞金稼ぎも☑してあるFactionを持っているようです。
「Aggressionが1以上」ならば、「Ignore~」や「Shared~」で共有した「お尋ね者」を仕留めようとしてきます。衛兵のように自ら逮捕できる立場の者の場合、☑されていると「近づいて攻撃→犯人が降伏→逮捕の会話発生」、☑されてないと「近づく→同時に逮捕の会話が自然発生」というように、最初の威嚇攻撃の段階を設けずにやや冷静に取り締まるようになります。
「Arrest」は、衛兵が近づいて「逮捕」の対話を発生させたり、犯人が武器を降ろした時に、降伏を認め
「逮捕」できるかどうかを決定しているようです。ここに☑が無かった場合、いったん犯罪者として敵対されたら最期…。反省する機会は与えられず即攻撃。時すでに遅し!ということになります。(【逮捕の仕組み】を参照のこと)
「CrimeGold」は、各種犯罪にどれくらいの
懸賞金をかけるかを設定します。0Gだとしても、犯罪判定は行われているようです。
「Marker」は、逮捕時のやりとりが終わった後にワープして、収監する牢屋とフォロワーの
待機場所を指定します。「Container」は、囚人の所持品の箱や盗品保管庫。「JailOutfit」は囚人服です。
まとめると、衛兵の持つFactionは…最も隙の無い「最強の逮捕Faction」です。
<同胞団のCrimeFaction>
特殊な「逮捕Faction」になっています。「Ignore~」が全て空欄なので、被害者の派閥に「あんたの仲間が“何らかの犯罪”に巻き込まれたよ!」と報告します。被害者の仲間は現場を見ていなくても、それ以降“お尋ね者”を記憶し、近くに居れば駆けつけて“現行犯”と敵対する事でしょう。また、「Do not~」に☑があり、「Shared~」もNONEです。同胞団は目の前で起こった問題に関して、「他の団員や衛兵を呼ばず、落とし前は一人でつける!」といった感じ。CrimeGoldもスリ以外ついていないのは、罪にはゴールドではなく正義で決着するという戦士魂の現れです。窃盗をした時に限り、最初だけ
「DialogueCompanionsJorrvaskr」というQuestに設定された会話で、
説教(=逮捕)してくれます。その後も窃盗行為を繰り返すようなら、粛清。「Shared~」や「AttackonSight」が「NONE」になっています。彼らは、仲間の手が犯罪によってどんなに薄汚れてしまっても…それが原因で対立しません。決して見限らず、同じFactionに属する“盾の同志”であれば、相手がどんな立場であろうが最後の瞬間まで共に戦ってくれます。しかし“仲間殺し”をはじめ、組織内における犯罪は決して許されない違反行為に該当します。
<盗賊ギルドのCrimeFaction>
一風変わったCrimeFactionです。「Ignore ~」に全て☑がついているので、被害者の派閥に決して犯罪を報告しません。他人への犯罪は全て見て見ぬふり。プレイヤーが盗みを働くのを見かけるたびに、被害者に報告していたら…ギルドの仕事が成り立たなくなるので、当然です。盗賊ギルドのメンバーは
「自分自身に降りかかった犯罪にだけ対処する」と言うことができます。「Arrest」に☑がついていないので、「逮捕Faction」ではありません。逮捕しないということは、罪を犯した者と認識すれば即刻、処刑することを意味します。やはり、一対一で決着を付けます。特徴的な点として、「AttackOnSight」に☑がついていて、ギルドに対する軽犯罪には“若手の盗みの予行練習”程度に目を瞑りますが、賞金額が高くなってくると仕留めようとしてきます。
【逮捕の仕組み(プレイヤー編)】
この章の「逮捕の仕組み」は、主にプレイヤーが犯人として逮捕された時の状況を調査したものです。NPCが逮捕された時は、挙動が異なる可能性があるため、その詳細に関しては別の章でまとめます。
「一般住民」のCrimeFactionは、衛兵のFactionと全く同じですが、彼らが“対話”をして「逮捕」を行う姿を見たことがありませんでした。一体、何故なのか?―――意外なところに『逮捕の仕組み』の答えがありました。
「DialogueCrimeGuards」というQuestに着目しました。衛兵との対話に関するQuestです。QuestDialogueConditionsを見てみると、
「IsGuard=1.00」という条件が指定されています。この判定は、Actor自体に設定された
「IsGuardFaction」に起因しているようです。同胞団のサークルやオーク要塞の住民などもこのFactionに所属しています。このFactionを保有していると、
犯人との対話が可能になります。…彼らも隠された「衛兵」だったのです。
CrimeFactionだけは他のFactionと扱いが違い、Actorが生成された時点からずっと抜けられない仕様になっているようです。また「IsGuardFaction」は、取得した時点で「IsGuard=1.00」となり、「衛兵」の属性が付きますが、このFactionから抜けても衛兵属性だけは残ってしまうようです。何故このようなことが起こるのか……今のところ原因は不明です。
DialogueViewを見ると、被害者や目撃者の「通報」や「援護要請」に応じて、
プレイヤーの犯罪の現場に駆け付けた時に発生する会話が用意されています。(降伏した時にこの逮捕の会話が出るかどうかは、CrimeFactionの「Arrest」の有無で決まっているようです。)
衛兵の台詞は、ホールドごとの会話が用意されていたり、Conditionsで対象の
賞金額が0より大きいか(
GetCrimeGold > 0.00)を調べ、罪人かどうかを特定しているようです。
また、台詞には
『PapyrusFragment』が組み込まれているものもあります。プレイヤーの返答に応じた台詞の発生と共に、「ゴールドを徴収」、「監獄へ送る」、「逮捕に抵抗した者とみなす」などの処理がScriptによって行われる仕組みのようです。
「住民」は、上記Questの「IsGuard=1.00、GetInFaction:GuardDialogueFaction=1.00」の条件を満たしておらず、さらに逮捕時の会話のやり取りが元々存在していないので、犯罪者に問いかけることができなかったのです。“衛兵”の行う逮捕は「Questによる派手なパフォーマンス付きの逮捕」ですが、実は内部処理的には“住民”にも「地味な逮捕」が存在しています。―――プレイヤーが
「武器を降ろす」という
降伏動作です。
CrimeFactionの項目で少し述べましたが、衛兵のような派手な演出の「逮捕」が行えない住民のFactionにも「Arrest」が☑されていました。もしかすると、衛兵のためだけにあるのかもしれませんが…この☑の有無は、「降伏すれば一回だけは目を瞑ってやる」という意味での「地味な逮捕」の可能性があり、「逮捕時の衛兵との対話⇒見逃してやる」と同じような役割を果たしているのかもしれません。住民のやり方は「逮捕潜伏状態(敵対時)⇒武器を降ろす⇒仮釈放」と表すことができます。仮釈放時に再び罪を犯せば、それ以降逮捕を行わずに粛清する点は衛兵と同じです。
【総括~プレイヤー編~】
筆者自身、スカイリムの内部処理やScriptに関する知識に欠けており、核心に迫った内容はあまり記載できませんでした。調査の成果として、「犯罪」と「逮捕」の処理には、CreationKit上での設定とゲームの仕様(改変が及ばない部分)の分担あることが、何となくですが把握できてきました。確認したデータによる推測や実験の経験則で得られたことも、少なくありません。しかし、考えが及ばない部分も多々あり…「Script等を用いれば、CrimeFactionを変更できるのか?」、「TrackCrime(人々の犯罪に対する記憶)はいつリセットされるのか?」、「衛兵とそうでない人との設定や本質的な違いは何なのか?」など、挙げたらキリがないくらいの謎がまだ残っています。あれこれと考えていても埒が明かないので―――
(~回想~)重罪人・道化エルフの執念。
道化エルフ「!!!」
―――次の調査へ進みます!! リッチなソリチュード監獄の“良質なパンとチーズ”をチビチビかじるように…おなじみの“脳筋解決法”を駆使して問題を整理つつ、製作に役立つヒントを見出していけたらと思います。
…つづく。